名古屋市の子宮頸がん接種後の健康調査は失敗だった。

名古屋市は、昨年9月、子宮頸がんワクチンを接種した女子生徒を含むすべての10代の女子生徒を対象に、アンケートによる健康調査を行った。対象は70960人で、回収は30793件、43.4%であった。
昨年12月、速報版に以下のような3項目の結論が示された。(以下、◯※も含め原文のまま)

 ◯年齢補正を行った結果、今回調査した24項目の症状について、ワクチン接種者に有意多い症状は無かった。

 ◯逆に、ワクチン接種者に有意に少ない症状もあったが、これはすでに症状のあった方がワクチン接種しなかった結果とも考えられ得るため、ワクチンの影響とは言い切れない。

 ※この結果は統計的な分析であり、個々の事例の因果関係については慎重に判断する必用がある。

1番目の結論は、予想外であるが、ワクチン接種によって増加した症状は一つもなかった、ということである。"年齢補正"から始まるところに引っかかるが、それは2番めの結論に関連する。

2番めの結論は非常に興味深く、よく考えなければならない。名古屋市のワクチンを"接種していない"少女たちでは、"接種した"少女たちに比べ、健康を害していることを示す症状をもつ率が年齢とともに次第に増えていく、という結果になっているのである。

 このことが、子宮頸がんワクチン非接種群を基準に、接種群との症状の頻度の比較するとき、年齢補正が重要となり、"ワクチン接種者に有意多い症状は無かった"という結論になるのである。

 だが、ワクチン非接種の集団において、"健康の障害を意味する症状の項目が年齢とともに次第に増えていく"ということは考えにくく、"一体どうなっているのだ"と問わねばならない。

 ワクチン接種の影響は、この変化をかぶって"検定不能"となっていると考えるべきである。つまり、結論2は、"名古屋市の、子宮頸がんワクチン接種の健康への影響の分析は失敗に終わった"と言っているに等しい。

 したがって、本年6月、上の結論を取り消したことは妥当なのである。(実は副反応を認めたことになる)。市のホームページから速報版.pdf は削除された。現在、整理された「子宮頸がん予防接種調査 回答集計結果」と未加工のデータ(raw data)が示されている。

 これは、分析の手法というよりはアンケート全体の設計に問題があったと考えられる。報告書のタイトルからして、ワクチンの副反応調査という姿勢は感じられない。

 ワクチンの副反応被害は少数しか起こらないので、その少数を拾い上げることに適した手法を考えねばならない。95%信頼区間を計算して見るとわかるのだが、群の中で陽性の率が小さいと、計算式の性質から、95%信頼区間がなかなか1を超えない。

 また、副反応調査が目的であるならば、VAERSを習って、少なくとも、救急受診、入院、障害が残った、とかの項目を入れるべきであった。

 資料をみて、思ったほど副反応は多くない。私の実感も、HPVワクチンを射った女子生徒の大多数は健康を害してはいない。だから、結論としてはよく、「"全体として"、子宮頸がんワクチンには問題ない」とされてきたのである。

 だが、少数だが、ワクチン接種の副反応によると考えられる、日常生活を困難にするほどの重篤な健康被害が起こっていることは間違いのない事実であり、被害を受けた方々が救済を求めていることも、今更言うまでもないことである。

海外では、米国VAERSに報告されただけでも、死亡数が300に迫ろうとしている。

 このような重症な人たちの数を調査し、救済と今後のワクチン政策に生かしていくことがコストをかけたことの見返りであろう。だがワクチンの副反応の結論を取り消し、ウヤムヤにするなら、税金の無駄遣い、市民への裏切りではないのか、とのそしりから逃れられないだろう。

 「年齢補正の実体 - 問題となったワクチン非接種群での有症状率の増加」

 H12年生まれの15歳を基準にして、H6年生まれ21歳までの年率増加率を示すと
1.月経不順    7.4%
2.月経量の異常 8.9%
4.ひどく頭が痛い 9.4%
5。身体がだるい 14.2%
6.すぐ疲れる  11.9%
17.物覚えが悪くなった 25.9%
18.簡単な計算ができなくなった 38.9%
19.簡単な漢字が思い出せなくなった 29.7%
20.身体が自分の意思に反して動く 22.4%
21.普通に歩けなくなった 37.9%
22.杖や車椅子が必用になった  30.9%
23. 突然力が抜ける  20.9%

これらの増加率は、驚くべき大きさであり、ありえない。
この調査と解析がデタラメでないかとの疑いが頭に浮かぶのである。


[以下の分析も「ワクチン非接種群に有症状率が多い」という影響を受けるが一応示してみる]

上に紹介した速報版の結論は、22頁の「2.3 身体の症状と子宮頸がんワクチン接種の有無クロス集計」という表を元にしている。項目20と21を除けば、ワクチン接種の有無で、ほとんどの症状の頻度の違いはない(年齢補なし)
1 月経不順   オッズ比 1.05   95%信頼区間 0.99 - 1.11
2 月経量の異常      1.29         1.17 - 1.43
4 ひどく頭が痛い      1.03        0.95 - 1.11
5 身体がだるい       0.96         0.88 - 1.03
6 すぐ疲れる        1.01        0.94 - 1.10
17 もの覚えが悪くなった   1.27         1.09 - 1.48
18 簡単な計算ができなくなった  1.02       0.79 - 1.33
19 簡単な漢字が思い出せなくなった 0.99      0.83 - 1.18
20 身体が自分の意思に反して動く 1.52      1.13 - 2.04
21 普通に歩けなくなった    1.46       0.90 - 2.35
23 突然力が抜ける      1.25         0.99 - 1.57

下の左の図は、23頁の「2.3.1身体の症状に病院受診と子宮頸がんワクチン接種の有無のクロス集計」である。
ワクチン接種後、下の項目のような症状で、病院を受診していることは非接種群より多いことを示している。(普通ならここでまず、ワクチン接種群と非接種群とでの、病院受診比率のオッズ比を示したいのだが、データが示されていないので今のところ計算出来ない。)
1 月経不順   オッズ比 1.81  95%信頼区間  1.64 - 2.11
2 月経量の異常          1.93      1.57 - 2.11
4 ひどく頭が痛い          1.10     0.96 - 1.26 
5 身体がだるい          1.46    0.96 - 1.26  
6 すぐ疲れる            1.39     0.96 - 1.26
17 もの覚えが悪くなった      1.35     0.75 - 2.41 
18 簡単な計算ができなくなった    2.19    0.75 - 6.42
19 簡単な漢字が思い出せなくなった  2.53    0.87 - 7.31
20 身体が自分の意思に反して動く   1.57     0.87 - 2.84
21 普通に歩けなくなった      1.65     0.90 - 3.05
23 突然力が抜ける        2.03      1.11 - 3.70  

 28頁に、「2.4. 症状の影響と子宮頸がんワクチン接種の有無のクロス集計」を見るべきである。
1 学校での勉強    オッズ比 1.02 95%信頼区間 0.94 - 1.12
2 勉学以外活動       1.03         .93 - 1.16
3 就職、就業         1.70        1.28 - 2.30

「就職、就業」が、今回の調査結果のなかで、数少ない"統計学的に有意"であることに注目してほしい。
HPVワクチン被害者が、高校卒業、就職、進学で大きな壁にぶつかっていることがわかる。
本人だけでなく、家族にも大きな負担と、苦痛、悲しみをを負っていることに想像力を向けてほしい。