サーバリックス拡販のためのシミュレーション

「ガーダシル、 サーバリックスは効果がある」という論文も読まないといけないと思い、いくつか探して読みました。
ガーダシルに比べると、サーバリックスの論文は、(インターネットで手に入るものは)少ないです。
その中で重要、面白かったと思えるものを紹介いたします。

Estimating the long-term impact of a prophylactic human papillomavirus 16/18 vaccine on the burden of cervical cancer in the UK
British Journal of Cancer (2007) 96, 143-150


この研究はGSK社から資金提供をうけており、著者らに報酬 (reimbursement)があったことが記されている。著者に2人のGSK 係者が名を連ねており、サーバリックスの効果をシミュレーションで示し、拡販をねらったものと思う。

シミュレーションの基礎資料として、マン チェスター コホート研究その他の、HPVの検出率、子宮頸がん 罹患率、死亡率が図が引用されており、私には大変役立った。


HPV感染から子宮頸がんの進展過程を 

非感染<->HPV 染<CIN1<->CIN2<->CIN3->Cancer

とモデル化し、HPV 別ごとの、感染から子宮がんへの自然経過を反映できるようにマルコフ過程モデルを改良した、とある。
CINcervical intraepithelial neoplasia の略である。
CIN3
の左側では、どの段階へも可逆と設定されている。
CIN3
からCancerへは非可逆と設定されている。


彼らのモデルで、マンチェスター コホート研究のデータを再現できようにモデルを改良した。
この辺はよくわからないし、詳しく書かれている訳でもないが、6月の移行(transition)をやって、良く合うかどうか確かめている。 この作業をCalibrationと言っている。

このとき使った確率(probabilities)を表に示されている。
非常に興味深い。

Oncogenic HPV Nononcogenic HPVとの間で大き な差があったのが

正常<HPV 染 35歳以下 0.023 - 0.077 : 0.008-0.026
          35
歳以上 0.004-0.023 : 0.001-0.008
CIN1
CIN2 35歳未満 0.014 -0.278 : 0.007-0.017
          35
以上 0.035-0.315 : 0.017-0.020
HPV
クリアランス   0.38 : 0.53


もっとも関心がもたれる
CIN3―
Cancerの段階は 0.002-0.0170.008
とあまり差が大きくないのである。


正常<ー>HPV感染<ー>CIN1の2つ段階の確率は、2つ論文のデータに基 づいている。

CIN3ー>Cancer の段階の確率も2つの論文に基づいている。
1つはワクチン(サーバリックス関係)の論文。
oncogenic
HPVnononcogenicHPVとでは、 宮頸がん移行の確率に差が無い事を認めているようなものである。


こんなことをするまでもなく、年齢階層別HPV感染率、子宮頸が ん罹患率、子宮頸がん死亡率グラフを見れば、この3つの間で相関がないことは一目瞭然である(図を添付出来ないのが残念である)
HPV
の感染率は若年者に高く、子宮頸がんによる死者は高齢者に多いのである。


彼らはこのモデルを使い、376385人の同一年齢の少女のコホートで、12歳 の時にワクチン接種を3回行い、100%の接種率、HPV16/18に対するワクチン有効率95%、HPV31と45に対するcross- protection 率をそれぞれ50%90%、抗体価が減弱しない(10 保たれ、さらに10年ごとのブースター注射を行う)、と仮定して シミュレーションを進めている。

ワクチンを打たない場合には1403の子宮頸がん死が予想(計算)され、10歳からサーバリックスを打った場合は335(76% )に、18歳で打ったときには506(54% )とシミュレーションの結果が示されている。
ワクチン接種率80%では549(61%減)と示されている。
この論文が12歳の少女にサーバリックスを注射する根拠を示しているようだ


問題点を指摘するなら、上に示したように、このモデルでは、「子宮頸がんは100% HPV感染による」という仮説が前提になっている。
したがって、シミュレーションに示された結果は、ワクチン接種率、ワクチンの有効率、で決まるような結果がでるのが当たり前である。

cross-protection
率は高過ぎないのだろうか。

CIN1
<ー>CIN2HPV clearanceのところは他の論文による根拠が示されていない。
上のような確率を使うなら、年齢とともに、oncogenic HPV感染が増え、その結果oncogenic HPV 感染のCIN3が蓄積し、その結果cancerが増える、といことになるのではないだろうか。
当然ワクチンの効果が大きく見えるとおもう。

ワクチンの抗体価の減弱はすぐに始まり、10年持つとはとても思えないが、そのようなシミュレーションの結果は示されていない。

論文を全て理解したとは思っておりませんので、興味ある方は読んでみて下さい。
論文はここで得られます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17146475


あわせてお読みください。

この記事について

このページは、さとう内科循環器科医院 - 宮城県大崎市が2011年3月 5日 19:49に書いた記事です。

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